Tシャツ刺繍加工とは|向くデザイン・データ・生地の厚さとの相性
ロゴを刺繍にしたいというご相談を受けたとき、最初に確認するのは「そのロゴのいちばん細い線」です。
刺繍は糸で描く加工なので、糸の太さより細い線は再現できません。逆に、糸の太さで表現できる範囲なら、プリントにはない立体感と高級感が出ます。
この記事では、刺繍の仕組み、向くデザイン、糸色の考え方、生地の厚さとの相性を、初めて刺繍を発注する方向けにまとめます。
刺繍加工の仕組み(糸で描くプリント)
刺繍は、刺繍ミシンが糸を生地に打ち込んで模様を作る加工です。針の動きは「パンチングデータ」と呼ばれる専用データで指示します。
プリントがインクを乗せるのに対し、刺繍は糸を縫い付けるため、触ると盛り上がりがあり、光の当たり方で糸のつやが見えます。
| 項目 | 刺繍 | シルクスクリーン |
|---|---|---|
| 色の作り方 | 糸色の見本から選ぶ | インクを調色する |
| 質感 | 立体・光沢がある | 平面 |
| 向く大きさ | ワンポイント〜中くらい | 小さめ〜大きなベタ面 |
大きさと質感の違いを押さえると、刺繍とプリントの組み合わせを設計しやすくなります。
刺繍に向くデザイン・向かないデザイン
刺繍は、輪郭がはっきりしたロゴや文字が得意です。一方で、細かい線やグラデーションは糸で再現しにくくなります。
| デザイン | 相性 | 理由 |
|---|---|---|
| 太めのロゴ・文字 | 向く | 糸の太さで輪郭が出せる |
| ワンポイントのマーク | 向く | 立体感が映え、高級感が出る |
| 極細の線・小さな文字 | 難しい | 糸より細い線は潰れる |
| グラデーション・写真 | 難しい | 糸色の切り替えで段差になる |
| 大きなベタ面 | 要検討 | 針数が増え、生地が硬くなる |
判断に迷う場合は、ロゴを実寸で印刷し、いちばん細い部分の幅を定規で測ってみてください。
細い線は太くする、小さな文字は省くという調整で、多くのロゴは刺繍に落とし込めます。
糸色と色数の考え方
刺繍の色は、糸の見本帳から選びます。プリントのように自由に調色はできませんが、見本帳の色数は多く、近い色は見つかります。
色を増やしても版は増えませんが、糸を替える回数が増えるため、加工の手間は色数に応じて変わります。
- ブランドカラーがある場合は、色見本(数値や実物)を添えて近い糸色を選ぶ
- 濃色ボディに淡い糸色は映えやすく、下地のような工程は不要
- 金・銀などの光沢糸は、糸の種類によって扱いが異なるため要相談
- 色数を抑えると、仕上がりも工程も安定する
糸色の最終確認は、サンプルで実物を見てから行うと安心です。
生地の厚さとの相性
刺繍は糸を密に打ち込むため、生地には引っ張る力がかかります。薄い生地では、刺繍の周りにしわ(パッカリング)が寄ることがあります。
厚手の生地ほど刺繍を受け止めやすく、仕上がりが安定します。
| ボディ | 相性 | 補足 |
|---|---|---|
| 厚手コットン(190〜210g/㎡) | 良い | グッズ・ブランドの定番 |
| スウェット・パーカー(340g/㎡) | とても良い | 立体感が最も出る |
| 定番(170g/㎡) | 普通 | 小さめのワンポイント向き |
| ドライ(135〜140g/㎡) | 要調整 | 芯を当てて生地を安定させる |
厚手コットンのボディやスウェット・パーカーのボディは、刺繍を主役にしたい企画で選ばれています。
薄い生地に刺繍する場合は、裏側に接着芯や不織布を当てて生地を安定させる方法があり、加工先と相談して決めます。
刺繍データ(パンチング)の準備
刺繍は、イラストレーターなどのデザインデータをそのまま使えません。針の動きに変換したパンチングデータを作る工程が必要です。
発注時に用意するものは次のとおりです。
- ロゴのデータ(ai・pdfなど、線がはっきり分かるもの)
- 刺繍する実寸(幅と高さ)
- 糸色の希望(色見本や近い色の指定)
- 刺繍する位置(左胸・袖・襟裏など)
パンチングデータの意味や再現できる細さは、刺繍データ(パンチング)とはで詳しく説明しています。
発注前に知っておきたい注意点
刺繍は仕上がりの美しさと引き換えに、いくつか気をつける点があります。
- 裏側に糸が出るため、肌に直接当たる位置では当たり布を検討する
- 針数が多いと生地がその部分だけ硬くなる
- 洗濯でインクが剥がれる心配はないが、糸の引っかけには注意が必要
- 一度刺した糸はやり直しできないため、サンプル確認が重要
サンプルで確認する箇所はアパレルOEMのサンプル確認チェックポイントにまとめています。
まとめ
- 刺繍は糸で描く加工で、立体感と高級感が出る
- 太めのロゴ・文字・ワンポイントに向き、極細線やグラデーションは苦手
- 糸色は見本帳から選び、色数を抑えると安定する
- 厚手コットンやスウェットほど相性が良く、薄手は芯で補強する
- デザインデータとは別にパンチングデータの準備が必要
ロゴが刺繍に向くかどうかは、実寸と細い線の幅で見当がつきます。データを添えて無料相談からお送りいただければ、仕上がりの見込みをお伝えします。